「読者への影響ももちろんですが、社内に良い影響があったことが、一番“採用広報をやってよかった”と感じている理由ですね」
そう語るのは、株式会社タノムの取締役(共同創業者) 福岡一樹様です。
タノム様では2024年春からユアパトが採用支援を行い、2025年夏からは採用広報の伴走もスタートしました。「採用のプロ」と「言語化のプロ」が同じチームであることで生まれた他にはないシナジー効果や、外部への発信であるはずの採用広報が、なぜ社内にまで好影響をもたらしたのか。その背景や変化について、Your Patronum リクルーター兼採用広報ディレクター佐藤美夏と採用広報ライターがお話をうかがいました。

なお、タノム様の採用支援に関する導入事例記事は、こちらよりご覧いただけます。
お客様に寄り添い、複雑な業務をシンプルにするタノムの事業
福岡様
タノムは、食品卸業界の受発注業務を中心に、DXを支援するSaaS「TANOMU」を提供しています。食品業界には、長年にわたって積み重ねられてきた複雑な商慣習や、個別性の高い業務が数多く存在しており、構造的にDXが進みにくい背景があります。その結果、日々の業務に追われ、本来であれば向き合うべき「食の新しい価値を生み出すこと」に十分な時間を割けていない現場を、これまで数多く見てきました。
だからこそタノムでは、お客様の業務や背景、課題に丁寧に向き合いながら、課題起点でプロダクトを育てることを大切にしています。そうした姿勢で事業を続けてきたところ事業も成長し、1年前にインタビューしていただいた時と比べ社員数も30人まで拡大しました。
候補者の声が採用広報の価値を教えてくれた——小さく試すという選択
福岡さん
以前、採用広報の取り組みを外部にお願いしていた時期がありました。一定の記事ストックも溜まったので、一度採用広報の活動自体は止めていたんです。
ただ、その後も面談や面接の場で、候補者の方から 「記事を見ました」 「会社の雰囲気が伝わってきました」 といった声をもらうことが想像以上にあり、力を入れて取り組んだ方がいいと思うようになりました。
ちょうど同じ頃、佐藤さんから採用広報の提案をもらいました。社員数が増え、役割分担や組織の形も変わりつつあったタイミングだったこともあり、今のタノムに合った形で、もう一度採用広報に取り組んでみようと考えるようになりました。
佐藤さんとは以前から「まずは小さく試す」というスタンスで採用支援を一緒に進めてきました。そのため今回も、最初から完成形を目指すのではなく、「一度やってみて、効果を見てから判断しよう」という選択ができました。
実際、企画や構成案の提示、インタビューの日程調整や原稿の仕上げまで、ほぼユアパト側が進めてくれるので、私たちが割く時間は、1記事あたり2〜3時間程度。その中には、インタビュー自体も含まれています。
ユアパトのサービスのクオリティは把握していましたし、単発の施策としてではなく、採用全体を見たうえで支援してもらえる。その総合力への信頼があったことも、依頼しようと思えた理由の一つでした。
手段が目的化しない伴走——採用支援×採用広報が生むシナジー効果
福岡様
採用支援を担当する佐藤さんが採用広報もワンストップで伴走してくれるスタイルは、 ユアパトの大きな強みだと思っています。タノムらしさを理解している佐藤さんが軸になり、採用全体を見たうえで企画が立てられている。
タノムの背景や文脈を踏まえたうえで、「今のフェーズで、採用成功のために何が必要か」を考え、その手段として採用広報が位置づけられている。 だから、採用広報という手段が目的化していないんですよね。
完成した記事を見ても、「インタビュー前に何度も打ち合わせを重ねてきたのかな」 と思うくらいの解像度の高さで、一部分だけを切り取った印象もありません。過去の記事やこれまでの発信をきちんと読み込んだうえで、採用支援と地続きの文脈として仕上げられていることがわかります。採用広報だけが独立せず、採用支援と一体で設計されている点に、ユアパトの総合力を感じています。
あと、記事を見て驚いたのは、「読み物として成立しているな」ということでした。インタビューって雑談っぽくなることも多いですよね。座談会など複数人のインタビュー対象者がそれぞれ主張も職種も違うので、一体感のないまとまりない内容になりそうじゃないですか。
でも、完成した記事を読むと、ちゃんと一本の筋が通っている。文字になったやり取りを見て 「自分たちはこういうことを大事にしてたんだな」 と、読みながら再認識する感覚がありました。
取材対象者の言葉を、一段抽象度を上げて整理してもらっている。そんな印象です。言い換えすぎて違和感があることもなくて、うまく引き出して、言葉にしてもらっているんだなと感じました。
実際、弊社のCTO・古跡も「すごいよね」と言っていました。

採用広報ライター
お褒めいただきありがとうございます。記事化する際は、いったん発言をすべて分解して、「何が一番伝えたい軸なのか」を見つけ、筋が通るように再構成しています。
たとえば『“足で稼ぐ営業”から“共創する営業”へ──食品業界経験者が出会った卸の現場に変化を生み出す仕事』という記事では、「時間のゆとりが生む価値」というテーマが印象的でした。インタビューでは、仕事の話だけでなく、家庭の時間が生まれたというエピソードもお聞きしたのですが、その根底には「時間の余白が生む価値」という共通したテーマがあると捉え直し、仕事の話だけでなく、背景にある取材対象者の価値観まで伝わる構成にしました。「おそらく、こう感じているのではないか」「この言葉の背景には、こんな思いがあるのではないか」。そうした部分を丁寧に読み取りながら言語化することで、取材対象者にとっても、新たな気づきにつながる記事になることを意識しています。

福岡様
言葉そのものだけではなく、背景にある思いや含みまで丁寧に拾い、 言語化してくれている点もありがたいと感じています。
取材対象者の言葉だけで完結させるのではなく、採用広報ライターの視点や、その場での合意も含めて、一番しっくりくる表現を選んで記事にしている。
僕らにはできない、ワンランク上の仕事というか、プロにしかできないプラスアルファな提案をしてもらっているなと常々感じています。
社内と採用の“会話の質”が変わった──記事が生み出す価値
福岡様
効果として一番実感があったのは、実は社内でした。想像していた以上に、採用広報の記事が社内へのメッセージとして機能し、価値観の浸透につながっていると感じています。
自分のチームだけでなく、他のチームの記事も自然と読まれるようになり、「あのチームは、こんなことを考えているんだね」「リーダーたちは、こういう視点を持っているんだね」といった会話が生まれるようになりました。部署や役割を越えて、互いの考え方を知るきっかけになっていると思います。
タノムは、トップダウンで「こうあるべきだ」と強く言語化する会社ではありません。だからこそ、記事が共通言語として機能している感覚があります。各リーダーや会社の価値観が記事を通して伝わることで、メンバーから見ても「何が評価されるのか」「会社として、どんな考え方を大事にしているのか」が、以前より分かりやすくなったのではないでしょうか。
採用広報として始めた取り組みが、結果的に社内にも良い影響を与えている。そこは、はっきりと感じていますね。
採用広報ライター
採用広報は社外への活動という側面が強いですが、同時に社内のカルチャーを言語化し、共有する手段でもあると考えています。社内の体温が上がることで、エンゲージメントの向上やリファラル採用につながる土台がつくられていきます。
タノム様は、もともと社内の体温が高く、とても良い状態だと感じていました。そのうえで、今後のスケールを見据えたときに、より強固なベースづくりに貢献できているのであれば、嬉しいですね。
福岡様
そうした変化は、採用の場面にも影響していると感じています。というのも、カジュアル面談の場で、基本的な質問が明らかに減ったんです。
日程調整のメールの中で、関連する記事を引用して送るようにしているのですが、部署間の連携や働き方など、記事を読めば分かることは事前に理解した状態で来ていただける。その分、今後のビジョンや、まだ言語化しきれていないテーマについて話す時間が増えました。
もし記事がなければ、基本的な説明に時間を使ってしまいますし、解像度が低いまま話を進めても、お互いにとって実りある時間にはなりません。そういう意味で、記事が生み出す「時間の余白」は大きいと感じています。
”自社分析”が追いついていない組織ほど、ユアパトの採用広報が力になる
福岡様
採用広報は、会社のフェーズに関係なく、「採用がうまくいっていない」と感じている会社にとって、効果がある取り組みだと思っています。
その中でも、特にフィットしやすいのは、次のような状態の会社ですね。
- 社員数が増え、価値観の共有が難しくなってきた
- 人事専任がいない、もしくは採用に十分な時間を割けていない
- 採用がうまくいっていない理由を、言語化できていない
採用がうまくいかないと、どうしても外部環境や候補者側の話になりがちですが、実際には「自社の魅力が、まだ言葉になっていないだけ」というケースも少なくないと感じています。
採用広報は、応募数を増やすための施策というよりも、「自分たちはどんな会社なのか」を整理するプロセス。その整理ができていないと、伝えるべき魅力やメッセージも曖昧になってしまいます。
社内に“言語化できる人”がいない状態であっても、採用全体を理解した立場から、思いや価値観を丁寧に言葉にしていく。そうしたユアパトの伴走は、「自社らしさとは何か」「強みはどこにあるのか」を、これからの採用や組織づくりに耐えうる形で整理したい組織にとって、大きな支えになるのではないでしょうか。
まとめ
タノム様の事例からは、社内へのカルチャー浸透や、選考における対話の質の向上など、確かな価値が生まれていることが見えました。
自分たちにとっての「あたりまえ」は、意識しない限り、暗黙知のまま組織に蓄積されがちです。しかし、組織がスケールしていく過程では、その曖昧さが、将来的なすれ違いや組織課題の原因になることもあります。
採用広報は、インタビューや記事という言語化プロセスを通じて、そうした「あたりまえ」を可視化します。組織としての共通言語が生まれることで、チーム間の認識のズレや、経営層との視座の違いによる摩擦を、未然に防ぐことにもつながります。
ユアパトのインタビューは、話を引き出すだけで終わりません。第三者の視点だからこそ見える自社らしさや魅力を丁寧にすくい上げ、言語化していく。そのうえで、表面的な発言だけにとどまらず、背景にある考え方や感覚にも目を向けながら、一本の筋が通った、自社らしさの詰まったストーリーとして記事に仕上げていきます。
客観的な視点で自社を見つめ直し、これからの組織づくりや採用に備えたいと考えている企業は、まずは無料相談から、お気軽にご相談ください。



