「給与基準がないと採用しにくい」「評価制度がないためフィードバックがしづらい」「制度がイマドキじゃないから新しくしよう」。このような理由で人事制度を作ろうという流れになるケースをよく見かけます。しかし、必要だから、トレンドを取り入れたいという理由で制度を作っただけでは予期せぬ弊害を生み、制度が形骸化することも。人事制度を作る際にどのようなことに気を付けなければいけないのでしょうか?実際にYour Patronum(以下、ユアパト)が携わった人事制度設計のプロジェクトの流れを交えてご説明します。

人事制度設計が重要な理由

等級制度・評価制度・報酬制度

人事制度とは、主に等級制度、評価制度、報酬制度の3つを指し、社員へ支払う報酬形態を取り決めることに加え、社員がパフォーマンスを上げやすくするための条件や仕組みを組み込んだものです。人事制度は、経営がどのような行動や成果を投資対象とするかという意思表示に他なりません。そのため、人事制度を設計する時は、会社の理念、ミッション、経営戦略に沿って「求める組織」と「必要な人材像」の方針を決め、整合性を取り制度を決めることが重要となります。

例えば、カスターサポートの評価基準に”対応件数”や”応対時間の短さ”を重視した指標を組み込み運用すると、「1件1件の応対をどうすれば短くできるか」、そもそも応対を減らすために「FAQを充実させてみては?」と効率化を図る動きがでるかもしれません。お客様満足度に重きを置く指標を作り仕組化が成功した場合には、「サービスのファンを増やすにはどうしたらいいか?」「満足度を図るためにフィードバックをもらえる仕組みをつくろう」といった前者とは違った動きが生まれることが予測されます。このように、設計する制度内容によって社内各所に多大な影響と変化をもたらすため、人事制度は企業戦略を推進する上での重要な戦術といえるのです。

人事制度設計時に気を付けるべきポイント3つ

制度の目的を明確にする

人事制度は、強いチームをつくるための手段でありゴールではありません。「何を目的として制度をつくるのか」「どのような成果を生み出したいのか」を明確にした上で制度設計に取り掛かる必要があります。さもなければ、良かれと思ってつくった人事制度の効果が発揮されず、将来の負債になるリスクもあります。

人事制度は、企業の理念や経営戦略のメッセージを制度に取り込み伝播することで、社員のモチベーション向上とパフォーマンスの最大化、そして、組織の持続可能な成長を促進できます。期待する効果を存分に発揮させるためにも、これから人事制度をつくる方は、制度設計の目的の明確化から始めることをお勧めします。

メッセージングに重きを置く

経営は、今起こっていることから最重要課題をみつけ、未来に起こりうることを予測しながら手を打っていきます。そのため、経営メッセージは抽象度が高くなり、抽象度が高いと社員との視座が合わず、認識のギャップが生まれます。結果、社員から「言っていることとやっていることが違う」と誤解されやすくなります。こうした両者のギャップを埋めるためにメッセージングに重きを置く必要があるのです。

現場の社員にまで経営メッセージを伝え、エンゲージメントやモメンタムを上げ、社員の行動を変容させる。この一連の流れができて、はじめて制度設計が定着し効果を生みます。人事制度設計時に制度を通して実現したい世界になるストーリーを作り、社員から目的達成に向けた行動を引き出す効果を組み込むように心がけましょう。

制度は運用が8割!完璧を求めすぎず適宜チューニングを

VUCA時代では、目まぐるしく情勢が変わるため、適宜人事制度を見直し、改定することが必要となります。急成長中のベンチャー企業でも「〇人の壁」という言葉があるように、フェーズごとに必要な制度は変わります。最近の事例でいえば、コロナ禍によるリモートワークスタイルの導入、Withコロナ時代突入による出社スタイルの復活など人事の皆さまは度々制度や仕組みを見直す機会に出会ったことでしょう。

今の組織課題を解決するために完璧に制度をつくりこみすぎると、事業成長フェーズの変化に対応しきれず、組織運営に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。将来の変化を恐れず、未来の組織課題や情勢を見据え、適宜チューニングする心づもりでいると良いでしょう。制度を改定する覚悟を持っていれば、組織運営の問題が生じる前段階で手を打ち、組織の成長を後押しすることもできます。

ユアパトの人事制度設計の進め方

ユアパトでは、先ほどの気を付けるべきポイントを踏まえお客様の支援を行っています。お客様によって目的・スコープ・期間、工程など課題解決への進め方は千差万別。今回は、10人規模のベンチャー企業の人事制度設計のプロジェクト例を用いてユアパトの支援の流れをご紹介します。

お客様情報

STEP1 目線合わせ

まず始めに、企業理解を深め、問題への共通認識を持つことから始めます。キックオフでは、インセプションデッキ(※)を用いて、「なぜここにいるのか(プロジェクトの目的)」「何のためにやるのか」「夜も眠れない問題(問題・課題・障壁)」などの質問を通してお客様の課題を言語化し、目線を合わせます。

インセプションデッキ

※インセプションデッキ:プロダクト開発を始める前に、プロジェクトのミッションやビジョン、状況や背景についての共通認識を作りあげるためのツール(問い)。

インセプションデッキを用いた制度設計方法についてはこちらの記事でも触れていますので是非ご覧ください。

手段が目的化する理由

会社が違えば文化も使う言葉の意味合いも変わってくるため、共通認識を持つことが非常に重要な作業となります。今回のお客様は以下の問題と課題を挙げていました。これらの問題解決のための障壁もいくつか挙げてもらい、具体策を示していきます。

問題・課題

また、 ”着手すべきタスク” と ”着手しないタスク” に分け、時間を有効活用できるようにします。細部までつくりすぎると後々の変更が難しくなるため、まず大枠をつくり、運用しながら効果測定結果によって変更できる余裕を残しておくようにしています。

やらないこと

STEP2 ファクト収集

お客様課題のボトルネックを特定し、適切な提案をするために事実確認を徹底的に行います。このプロジェクトでは、評価制度にフォーカスし、 ”誰のどのような行為を評価するか” や ”理想の組織図” などの ”人材マップ” を書いてもらい、そこで得た気づきと現状とのギャップを言語化しました。他にも過去の ”評価事例” や ”サービスのプロジェクト体制(プラン毎の内容、人権費、利益率など)” を共有してもらい、評価基準をあぶり出し、お客様の会社の中で起きていることを俯瞰して捉えていきました。

人材マップ

STEP3 優先順位決め

やることが決まったら優先順位を付けていきます。自社だけだと「あれもこれもすぐにやらなくては」となりがちな優先順位付けも、知見を持つ第三者が入ることで今やるべきことが目の前に用意されるので、優先順位付けに悩むことはもうありません。今回のプロジェクトではスコープを最重要項目に設定しました。

優先順位

STEP4 短期のゴール設定

2週間単位で振り返りを実施します。短いサイクルでのゴールを設定・達成することで課題への解像度を高め、着実に解決への道筋を立てていきます。組織課題は魔法のようにパパっと解決することはできません。愚直に凡事徹底して課題に向き合い、クリアしていくためにユアパトは伴走していきます。

ロードマップ

STEP5 宿題を通じてフィードバック

お客様のやるべきことを明確にし、適宜宿題を出しプロジェクトを進めます。最終フェーズのスピーチ作成に近づくにつれ、聞きたいことや確認したいことも多くなります。そんな時もご安心ください。チャットツールで少しのことでも連絡を取れるため、不安を解消しながらプロジェクトを進めていけます

STEP6 描く未来を手繰り寄せるストーリー(スピーチ)を作る

人事制度は経営からのメッセージでもあるため、普段の発言と整合性を取り、事業戦略にアラインさせる必要があります。加えて、メッセージを送る側も受け取る側も「ヒト」なので、情理を意識したコミュニケーションとなるようにつくりこむことが大切です。今回のお客様は社員数も10人と少なくニュアンスや雰囲気で情報を伝えることもできないことはありませんが、将来のスケールを見越して抜かりなくメッセージングを作っていきます。

お客様の声

「社員が自己成長を続けるにはどうしたらいいのか?」。そんな悩みに真摯に向き合ってくれたのがユアパトさんでした。最初に相談した時は、課題が山積みでどこから手をつければよいかもわからない状況でしたが、目的をブラすことなく、課題解決に向かってプロジェクトを推し進めてくれました。また、制度設計に留まらず運用面にも着目し、社員への効果的な伝達方法まで提案してもらったことで、形骸化しない人事制度を構築することができたと感じています。今後スケールしたとしても、困った時にはまた相談に乗って欲しい、そう強く思いました。

強い事業・組織をつくりたい方へ

ポイントを踏まえても組織運営は変数が多いため、自社にフィットした人事制度をつくることは至難の業です。制度設計に関わる方は忙しい仕事の合間を縫って知識を持つ知人に相談し、SNSやネットで情報を収集していることでしょう。「時間がない」「自社課題に必要な打ち手がわからない」「組織づくりに明るい相談相手が欲しい」そんな時は一度、ユアパトに壁打ちしてみませんか?


ユアパトは、事業成長に必要な組織の在り方を定義し、経営のコアメッセージ策定を基軸に、強い会社つくりを徹底的にサポート。メッセージングにこだわり、会社の経営戦略をアラインさせ、社員の行動を変えていきます。そして、組織にまつわる困りごとを採用、労務、教育とカテゴリーに分けずワンストップに対応できるため、プロジェクト進行中にイシューが変化たとしても長きに渡りナビゲートすることも可能です。

私たちがあなたの会社のコンパスとなり、ありたい未来を手繰り寄せます。ともに組織課題を攻略しワンランク上の組織・事業へとレベルアップしていきませんか?

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