M&A後のPMIというと、人事制度や業務プロセスの統合をイメージする方も多いかもしれません。
しかし実際には、制度やシステムだけでなく、採用・育成・評価・コミュニケーションといった「人と組織」に関する複雑な課題が現場で一気に表面化します。
では、何をグループ共通にし、何を各社の強みとして残すのか。そして、山積する課題のどこから手をつければよいのでしょうか。
本記事では、ユアパトの支援事例をもとに、現場で「人と組織のPMI」を円滑に進めるための具体策をご紹介します。
制度統合だけではない、M&A後の組織づくり
M&Aは、契約が成立した瞬間に成功するわけではありません。むしろ、人と組織にとっては、そこからが始まりです。
M&Aやグループ参画を経て、別々だった会社や事業が一つになると、現場ではこんなことが起こります。
「会社ごとに判断基準が違い、同じグループなのに話がかみ合わない」
「人事制度をそろえるべきなのか、それぞれの会社らしさを残すべきなのか分からない」
「採用や育成のやり方が会社ごとに違い、ノウハウが共有されない」
「経営から新しい方針は示されたが、自分たちの日々の仕事がどう変わるのか分からない」
シナジーを期待して一つのグループになったとしても、翌日から自然に「ワンチーム」になるわけではないからです。
こうした共通認識がない状態を放置すると、現場に多様な影響を及ぼします。
- 判断基準が異なり、マネージャーの意思決定が遅れる
- 確認や調整に追われ、マネージャーへの負荷がかかる
- 評価への不満からキーパーソンが離職する
結果として、M&Aで実現したかった事業成長そのものを妨げてしまいます。
統合で本当に大切な4つのポイント
そこで重要になるのが、M&A後の統合プロセスである「人と組織のPMI」です。PMIというと、制度やシステム、業務プロセスを一つにそろえることをイメージしがちです。ところが、人と組織においては、必ずしも統一だけが正解とは限りません。
大切なのは、
- 何をグループ共通にするのか
- 何を各社の強みとして残すのか
- 新しい組織で、何を判断のよりどころにするのか
- 経営の方針を、採用・育成・評価・日々の行動にどうつなげるのか
を整理し、現場メンバーが迷わず判断して動ける状態までつくることです。
見えやすい「制度」の裏にある、“暗黙の前提”に目を向ける
人と組織の統合を考えるとき、着手しやすい施策は人事制度や組織図の統一です。
しかし、実際に現場を動かしているのは制度や組織図だけではありません。
「この会社では、誰に相談してから決めるのか」
「スピードと慎重さのどちらを優先するのか」
「成果をどう評価するのか」
「困ったとき、どこまで率直に相談してよいのか」
こうした言葉になってはいない判断基準やエスカレーション先の有無も、人の行動を大きく左右しています。
だからこそM&A後には、方向性・仕組み・日々の行動の3つをつなげて考えることが重要です。
ユアパトの支援ステップ
ユアパトが支援する際も、最初から特定の施策を当てはめるのではなく、経営と現場の双方から状況を把握し、「どこを共通化し、どこを残し、何から手をつけるのか」を整理するところから始めます。

ここからは、実際の事例を通じて、「人と組織のPMI」にどう向き合ってきたのかをご紹介します。
「グループとしてつながる仕組み」をつくる
セイワホールディングス様
セイワホールディングス様では、約5年間で14社の事業を譲り受けました(2026年9月現在は16社)。
その結果、多様な年次・価値観・文化を持つメンバーがグループに加わっています。
そうした中でユアパトが取り組んだのが、組織フェーズに合わせた人事制度の再構築です。
併せて、採用サイトや採用ピッチ資料、動画の制作も行っています。
さらに、グループをつなぐ取り組みとして社内広報部を発足させました。
背景にあったのは、会社ごとに文化が異なり、方針と日々の仕事が結びつきにくいという課題です。
そこで、他のグループ会社の仕事を知り、グループの一員としてのつながりを育てるための企画を進めました。
この社内広報をつくる過程そのものが、今後の組織づくりを担う人材の育成にもつながっています。
これらは個別施策として導入したものではありません。
「異なる会社が、それぞれの特徴を持ちながら同じグループとして働ける状態」をつくるために、複数の施策をつないで進めています。
Point:制度だけでなく、会社同士が互いを知る仕組みも、グループとして働く土台になる。
この取り組みを詳しく見る
M&A・再編期の採用を、グループ共通の「判断軸」で前に進める
CARTA HOLDINGS様
CARTA HOLDINGS様では、約20のグループ会社で、採用フローや数値の管理方法が異なっていました。
そのため、採用に関するデータやノウハウを共有しにくい課題がありました。
ユアパトは、採用担当者と一緒に、数値をもとに課題を整理するところから始めました。
具体的な進捗から上流の戦略まで改善を重ねられる基盤づくりを支援しています。
その後、グループ再編に伴う新会社「CARTA ZERO」の立ち上げ期でも採用実務を伴走支援しました。
当時、採用拡大に伴い「選考官ごとに合格基準がバラバラである」という課題が生じていました。
そこで、求める資質や面接での判断基準を言語化しました。
質問や評価の仕方まで、実際の選考で使える形に整理しています。
こうした取り組みにより、共通の採用基準を持てるようになり、具体的な採用の進め方もチーム内に広がっています。
結果として、CARTA HD全体の採用数は前年64名から93名と拡大し、ユアパトはその採用活動を支援しました。
PMIにおいて、すべての業務ルールを同じにすることが目的ではありません。
複数の組織が一緒に動くためには、「ここだけは共通に持つ」という判断軸をつくることが重要です。
Point:すべてを統一せずとも、重要な判断軸を共通化することで、組織は協働しやすくなる。
この取り組みを詳しく見る
組織が拡大しても、個人の強みを再現できる状態をつくる
CPAキャリアサポート様
CPAキャリアサポート様では、組織の拡大に伴う課題を抱えていました。
個人の経験に依存していた支援品質や育成を、組織として再現できる形にする必要があったのです。
ユアパトは、経営との壁打ちや研修、マネージャー支援を実施しました。
これらを通じて、それまで暗黙知となっていた技術や判断軸の言語化を支援しています。
研修後には、学んだ内容を社内で再現し、新しいメンバーにも広げていく動きが生まれています。
また、M&Aで複数の会社がグループに加わったことを踏まえ、PMI領域の相談や助言も行っています。
個人の経験や暗黙知を言葉にし、社内で共有・再現できる形にしておくことが重要です。
組織拡大の段階から再現性を高めておけば、新しいメンバーを迎えた際の組織づくりにもつながります。
Point:暗黙知を組織の知識に変えておくことが、新しい仲間を迎えられる組織基盤になる。
この取り組みを詳しく見る
グループに入っても「自社らしさ」を失わない。自社の価値観を共通言語に
タノム様
タノム様は、2024年にインフォマートグループに加わりました。(インフォマート公式発表)
PMIでは、共通化するものを決めるのと同じくらい、「あえて残すもの」を決めることも重要です。
ユアパトはグループ参画後も、タノム様らしい採用や、大切にしている価値観を軸に採用支援を続けています。
その後、採用広報にも伴走しました。
社員インタビューや記事制作を通じて、日々の仕事で大切にしている価値観を言語化しています。
そこで生まれた言葉は、候補者への発信だけにとどまりません。
社内でも会社の考え方を深く理解するための「共通言語」として機能しています。
Point:PMIでは「変えるもの」だけでなく、「残したい強み」を明確にすることも重要になる。
この取り組みを詳しく見る
M&A後の人事・組織で、まず決めるのは「施策」ではない
事例のように、人事制度・採用・広報・育成など取り組んだテーマは様々です。
人と組織のPMIには「この施策をやればうまくいく」という一つの正解はありません。
人事制度を早くそろえたほうがよい会社もあれば、当面は各社の制度を残したほうがよい会社もあります。
共通の判断基準づくりを優先する場合もあれば、まずは互いの仕事や強みを知ることから始める場合もあります。
だからこそ、最初に施策を決めるのではなく、まず自社の状況を整理することが大切です。
まず整理したいのは、
- M&Aによって、どんな事業・組織をつくりたいのか
- そのために、何を共通化する必要があるのか
- 反対に、各社の強みとして何を残すのか
- 今、その実現を妨げている組織課題は何か
- 限られた時間と人員の中で、どこから手をつけるのか
です。

上記のように限られた時間と人員の中で、「自社にとってのボトルネック」を見極め、事業への影響が大きい課題から優先順位をつけて取り組むことこそが、PMI推進の重要なポイントです。
こんな状態であれば、一度整理するタイミングかもしれません
- グループ会社ごとに仕事の進め方や判断基準が違う
- 経営の統合方針が、現場の日々の行動まで落ちていない
- 人事制度を統一すべきか、各社の制度を残すべきか決めきれない
- キーパーソンやマネージャーへの負荷が高まっている
- 採用・育成のやり方が会社や担当者ごとに属人化している
- 「何となくうまくいっていない」が、何の問題なのか特定できない
- 人事・採用・広報・育成の施策が別々に動き、経営が調整役になっている
ユアパトでは、いきなり特定の制度や研修をご提案することは行なっていません。
まず経営・人事・現場の状況をお聞きし、今どこに課題があり、何から取り組むのがよいかを整理します。
M&Aで実現したかった成長から逆算して支援を行います。
採用、人事制度、育成、社内コミュニケーションなどを必要に応じて横断しながら、設計だけでなく実行・定着まで一貫して伴走します。
「PMIの課題なのかどうかも分からない」「制度の話なのか、文化の話なのか整理できていない」という段階でも構いません。
まずは、今起きていることをお聞かせください。




